2009年度は、前年度の試みや課題を実践する年度であった。実際に、従来のようなカテーテルを用いないで直接的な穿刺による標的病変へのアプローチを導入することで、放射線被ばくを軽減することに成功した。このことから実験室の確保に余裕ができた。また、大腿動脈を標的血管とする試みは、実際の人工血管置換には小径すぎて適さないことが明らかとなったが、対照健常血管としての評価部位としては十分とは言えないが、症例を選べば使用できる可能性が見出された。また、問題点としては検体のイヌの供給に問題があったことと移植血管の開存があった。供給については後半期には解決したが、置換した人工血管の閉塞が大きな問題となった。その要因としては、より臨床に近い状況の環境提供を目的としたがこれが閉塞の1つであったと考えられる(実際の臨床でも未だバイパス術に人工血管は使用されていない)。また、植え込む人工血管と固有血管のサイズのミスマッチがその原因として考えられた。逆に、十分な大きさのイヌを用いないことによりこのことは惹起されうると思われた。また、意外に本研究で用いた種のイヌでは頚動脈径のバリエーションを有することにも注意をしなければならないと思われた。本件に対する解決策として抗血小板剤の投与にて対処することが有効であると考えられた。次年度への課題は、病理標本の切片を如何に画像診断の結果と対比しやすいように作成するかということ、移植血管の開存、エバンスブルーによる生体染色の条件を設定することである。
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