平成22年度は小径人工血管の供給の中止、研究者の移動により症例を追加せずこれまでの画像を総合的に解析した。これまでの研究で得られた血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)、血管内視鏡の画像に加えて一部エバンスブルー染色を含む組織標本につき解析した。人工血管の生体適合性と自己化の評価には血管壁・血管外組織との関係・血管内腔の評価が重要であり、今回用いた人工血管口径においては、微妙な血管径の差が評価機器選択に重要であった。再閉塞や再狭窄をきたしていない人工血管は良好な張力を有し血管外組織との関連はIVUSでしか評価ができなかった。今回用いた完全開存の人工血管は、血流再開とともに張力を受け4.5mmほどの血管径を示し、IVUSにおける血管壁評価は生体内では石灰化に近い高輝度を示した。一方、内腔の微細な変化(他のモダリティーでの陽性所見)はIVUSの解像度では評価不能であった。内腔径(<3.0mm)となれば血管内視鏡とOCTが自己化の機序解明に有用であった。内腔の陽性所見はOCTでは内腔側の血栓様の付着物、血管内視鏡では内腔に白色斑状の島形成として認められた。これらは内皮細胞への分化能を持つ細胞集団である可能性が示唆されたが、画像診断上は"血栓"であった。以上より血管壁と内腔の評価は、大口径でなければOCTでの評価が期待される。一方、内視鏡では内腔面の新生内膜進展が評価可能である。OCTによる自己血管へ同化(弾性板の同定等)は今回得られなかったが、超遠隔期であれば3層構造などの評価も可能かもしれない。しかし基礎データでは内皮化の時期であり、一致しない結果であった。むしろ血管内視鏡による内腔面の評価に一致し、自己化は血管壁全層に渡らずとも内腔面から完成してゆく可能性が示唆された。EPC等はここに大きな役割を果たすものと思われ、今後抗体ラベル等を用いた追試の実験系が期待される。
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