研究概要 |
平成22年度は昨年度報告したように、人工血管の代わりに自己静脈を用いて以下の実験を施行し論文が掲載された。 【方法】ラット自家大腿静脈を用いた腹部大動脈置換モデルを作成し、ピオグリタゾン(3mg/kg/day)経口投与群(group A、n=6)と非投与群(group B、n=6)の2群に分類した。術後8週目に、グラフトの血流速度と外径の拡張率を測定し、摘出静脈グラフトをHE染色、Elastica van Gieson染色およびα-SMA免疫組織化学染色にて病理組織学的に評価した。 【結果】術後8週目において、ラット自家静脈グラフトはすべて開存していたが、ピオグリタゾン投与群では相対的グラフト血流速度(グラフト血流速度/腹部大動脈血流速度)が非投与群と比較して有意に速く(A,0.87±0.02;B,0.66±0.05;P<0.0001)、外径の拡張率は有意に抑制されていた(A,36.3±2.2%;B,61.4±3.9%;P=0.0002)。非投与群ではグラフト内膜および中膜が破綻し、不均一な新生内膜が形成していたのに対して、ピオグリタゾン投与群ではそれらが保持されて新生内膜の形成が抑制されていた(A,14.6±1.3%;B,29,9±2,9%;P=0.0008)。また免疫組織化学染色では、ピオグリタゾン投与群においてα-SMA陽性細胞が減少し、平滑筋細胞の増殖抑制され吻合部狭窄も抑制された。 【結論】ピオグリタゾンは、動脈再建に用いたラット自家静脈グラフトにおいて、グラフト拡張および内膜過形成を抑制し、グラフト血流速度を改善させた。また静脈グラフトの吻合部狭窄も抑制した。 平成22年度はピオグリタゾンの静脈吻合部狭窄抑制効果を確認し、ピオグリタゾン浸漬徐放性ジェルを作製した。今後継続し小口径人工血管吻合部にピオグリタゾン浸漬徐放性ジェルを使用し狭窄抑制効果を検討してゆく予定である。
|