研究概要 |
【目的】骨髄単核球細胞(BM-MNCs)移植の肺高血圧症に対する治療効果と血管内皮増殖因子とその受容体(VEGF-VEGF receptor)を介する肺動脈再構築の機序を解明すること.【方法】monocrotaline誘発マウス肺高血圧モデル作成後に,同種マウスの長管骨より採取したBM-MNCsを1×10^7個/匹経静脈投与したBMT群とBM-MNCs非投与群との間で,右室・左室心筋重量比,肺小細動脈中膜肥厚の程度(%medial thickness)および肺小動脈数を測定し,肺高血圧症の改善効果を比較検討した.機序解明のために,蛍光染色法にて移植したBM-MNCsの取り込みをBMT群の肺組織内で検索,また肺高血圧モデルとBM-MNCs移植後の肺組織におけるVEGFおよびVEGF receptor-2の発現度を測定,さらにBM-MNCs移植とともにVEGF receptor-2拮抗薬を投与し肺高血圧症の改善効果を評価した.【結果】1)BM-MNCs移植4週後,右室・左室心筋重量比,%medial thicknessはともに有意に減少,肺小動脈数は有意に増加し,肺高血圧症が改善した。2)移植BM-MNCsは移植後、肺組織内へのとりこみは認めなかった.3)肺におけるVEGFの発現は,BM-MNCs移植1週後に著明に上昇したがVEGF regeptor-2の発現には影響はなかった.4)BM-MNCs移植と同時にVEGF receptor-2拮抗薬投与を行うとその4週後に肺高血圧改善効果は抑制された,【考察】monocrotaline誘発肺高血圧モデルにおいて経静脈的BM-MNCs移植は,肺小動脈のリモデリングにより肺高血圧症を改善した.その機序として,細胞移植に伴う肺組織でのパラクライン効果によるVEGFの増大とそれによるVEGF-VEGF receptorシステムの活性化が肺小動脈のリモデリングを引きおこし,肺高血圧症を改善すると考えられた.
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