狭心症、心筋梗塞に対する外科治療としては、冠動脈バイパス手術が標準である。しかし、心筋バイアビリティー(心筋の生存能)のある虚血心筋は手術により機能回復が期待できるが、壊死心筋には効果が期待できない。そして、近年本邦においてもバイアビリティーに乏しい重症虚血性心疾患が増加傾向である。本来は心移植の対象となるが、心移植はドナーの数的制限などから十分に提供できる治療法ではない。そこで注目され始めたのが左室形成術である。本術式は壊死心筋を切除し、拡大心を縮小し左室収縮力を改善させる手術法である。本術式では、虚血性心筋症において虚血部位と梗塞部位の見極め、切除すべきかどうか、また切除する場合はどの範囲かを確実に決定することが重要となる。これまでの心筋バイアビリティーの評価法であるシンチグラフィーや心エコー法にはそれぞれに欠点を有している。一方、核磁気共鳴断層法(MRI)は非侵襲的で極めて精度の高い検査法として評価されており、近年ガドリニウム造影剤を用いた遅延相画像は心筋のバイアビリティーを反映すると考えられている。本研究の目的は、そのような特徴を有するMRIを用いて、虚血性心筋症に対する左室形成術の適応決定および左室切除範囲の正確な同定を実現させることであり、また遠隔期に評価を行うことでMRIに基づく左室形成術の効果を検証することである。 平成20年度は、15例の虚血性心筋症患者に対しMRIを施行。その結果に基づき、7例に対し左室形成術を施行。また、心筋バイアビリティーがあると判断した8例は左室形成術を行わず、冠動脈バイパス術のみ施行した。術後7日目のMRIによる心機能評価では改善傾向示していた。 今後、さらに症例を積み重ね、また遠隔成績を確認するため術後6ヶ月を目安に心機能評価を行う予定でちる。
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