研究課題/領域番号 |
20591668
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
板東 徹 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20293954)
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研究分担者 |
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
庄司 剛 京都大学, 医学研究科, 助教 (80402840)
藤永 卓司 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00444456)
陳 豊史 京都大学, 医学研究科, 助教 (00452334)
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キーワード | 外科 / 移植・再生医療 / トランスレーショナルリサーチ |
研究概要 |
昨年度は、ビーグル犬肺を用いた肺移植モデルの実験系を確立した。本年度は、この系を用いて、イヌ肺に4時間の温虚血を与えた後、さらに2時間の冷却保存後にイヌ左肺移植を行い、再灌流1時間後に対側の右肺門をクランプして、肺機能が移植肺のみに依存する状態で再灌流後4時間まで肺機能を評価した。その結果、4時間の温虚血の間、無換気のまま放置された対照群(n=8)では、移植後に明らかな肺障害を示し、4頭が高度の肺水腫のため再灌流を完遂できなかった。一方、温虚血4時間のうち、最後の1時間のみに人工呼吸器による純酸素換気を行った換気群(n=6)では、6頭とも再灌流を完遂し、有意に良好な肺機能を示し、肺組織内の高エネルギーリン酸化合物が保持され、アポトーシスの軽減が認められた。また、対照群では組織学的に高度の出血や炎症所見を認め、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-8、IL-6)の高値を伴っており、温虚血中の陽圧換気に肺保護効果があることが判明した。次に、当初の目的である薬剤吸入効果を検討するため、上記の実験プロトコールに修正を加えて、温虚血時間を5時間に延長し、このうち最後の1時間のみに陽圧換気を行った群を対照群(n=5)として、この陽圧換気に加えて、サルメテロールと同様の市販のβ2-刺激剤であるプロカテロールの吸入を行った吸入群(n=5)と比較検討した。その結果、対照群では1頭が肺水腫のため脱落したのに対し、吸入群では5頭とも4時間の再灌流を完遂した。再灌流後の酸素化能、肺コンプライアンス、肺血管抵抗は、吸入群が対照群に比べて有意に優れていた。以上の結果から、心停止後移植肺グラフト保護におけるプロテカロール吸入と陽圧換気の有効性と安全性が臨床に即した形で確認された。 以上の成果は、本年度の国内外の学会で報告し、英論文として国際誌に投稿中である。
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