浸潤傾向を示さない細気管支肺胞上皮癌(BAC)と間質への浸潤部位(invasive component)を認めるmixed subtypeの腺癌の違いには、宿主由来stromal cellの働きが関わると考えられる。我々は独自に開発したアッセイ法および切除標本を用いて、BAC cell浸潤における癌-宿主相互作用の役割を検討した。【方法】我々が開発したcollagen matrixを重層した培地DL-CGHを用い、A549(BAC cell)、WI-38(lung fibroblast)を封入し、細胞運動を観察した。また肺腺癌切除127例の標本を用いてinvasive componentでのMMPs、接着分子群の発現を検討した。【結果】A549単独での浸潤は微弱であった。これに対し、蛍光標識したA549とWI-38を混合したところ、まずWI-38が樹枝状に進展して行き、それをつたうようにA549が拡がる様子(amoeba-like movement)が観察された。接着分子群の役割を調べたるためRNAiを行ったところE-cadherinの抑制により浸潤は増強した。切除標本における発現の検討では、invasive frontでのNectin3、Necl-5の発現が認められ、それらの発現は予後に強く相関していた。【考察】我々のアッセイにより腫瘍と宿主が形成する微小環境を実験的に再現することができ、癌浸潤におけるその意義が示された。また浸潤部位における接着分子の発現が癌-宿主相互作用に強く関連し予後に直結し、分子標的や分子マーカーとして臨床的意義を持つ可能性が示唆された。
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