研究概要 |
【目的】今回は豚を用いて,胎生期肺組織の成体肺内での生着と分化について検討した。 【方法】胎齢約90日の胎仔肺組織を採取し,DMEM培地内で細切し,18G針を用いて全麻下に成体右肺内および胸部筋肉内に注入した(n=6)。移植当日より免疫抑制剤(サイクロスポリン;CsA,10mg/kg i.m,7日間連日,以降内服連日,14日以降内服隔日)と抗生物質を継続投与した。術後経時的(POD 0,7,14,23,30,32)に胎生期肺組織を注入した右肺と筋肉部分を組織学的に検討した。犠牲死時のCsAの血中濃度を測定した。 【結果】POD7では,肺内に移植胎生期肺組織の生着を認め,当該部分は単層立方上皮を有する呼吸細気管支,肺胞道様の構築を示し,胎生期後期の構造ながら胎仔肺組織採取時よりも分化を認めた。一部にはリンパ球浸潤とレシピエント肺とのあいだに線維性変化を認めた。POD23以降では移植部分は拒絶反応によると思われるリンパ球浸潤と移植肺組織の壊死と線維性変化を認めた。筋肉内では,どの時期においても胎生期肺組織の生着は認めなかった。CsAの血液中濃度はPOD 7,14の350,580ng/mLに対し,POD 23,30,32は20,120,20ng/mLであった。 【結論】大動物においても胎生期肺組織は成体肺内に生着し,分化することを示した。Allograftcombinationでは,移植組織の生着の継続のためには厳重な免疫抑制が必要である。ラットとの場合と比較して,豚の移植肺組織の移植後の分化はゆっくりしており,種本来の当該組織の分化スピードに依存していると考えられる。
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