研究概要 |
我々は,胎生期肺組織に着目した,胎生期肺組織移植による肺組織再生・修復に関する実験的検討をラットを用いて行ってきた。今回はこれまでの小動物での成果をふまえて,豚を用いた大動物での胎生期肺組織移植の可能性を検討した。また気管支鏡よるレシピエント肺への経気道的デリバリーの可能性についても検討した。 1.開胸下でレシピエント肺に,胎仔肺組織を移植し,移植肺が生着することを組織学的に確認した。ドナーソースとして胎生後期(胎齢約85-90日)を用いた。豚胎仔肺をDMEM培地中で細切し,14G針を用いて成体豚肺内に小開胸下に注入した。注入箇所の目印として注入部肺胸膜下に点墨を行った。胎仔肺は,一個体の左右肺を10mlの培養液中で細切することで,約15mlの容量となり,そのうち約10mlを肺内に注入した。胎仔肺の気管,中枢側の気管支は除いた。移植当日より連日サイクロスポリンを10mg/kgを投与した。 2.気管支鏡を用いて胎仔肺組織を経気道的にレシピエント肺に投与(injection)し,経気道的デリバリーの可能性を検討した。豚右上葉に気管支鏡の鉗子口より,細切した胎仔肺組織を注入投与した。肺胞レベルへのデリバリーは可能であったが,その多くの組織が咳とともに喀出され,他の肺葉気管支に散布された。肺内への生着は肺表面より穿刺注入した場合より生着は不良であった。市販の経気管支的生検針ではその内腔径が小さく,細切組織の注入は困難であった。18Gほどの気管支鏡用の注入針の作成が必要であると考えられた。 3.胎仔肺組織の肺内への注入による明らかな合併症は観察されなかった。注入後の全身麻酔からの覚醒もスムーズであった。肺表面からの穿刺により気胸が危惧されたが,特に問題となるような気胸は観察されなかった。肺表面の穿刺口は,注入した胎仔肺組織によりパッキングされることで気胸の発生が少なかったと考えられた。
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