研究課題/領域番号 |
20591676
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 之俊 北里大学, 医学部, 教授 (90321637)
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研究分担者 |
天野 英樹 北里大学, 医学部, 助教 (60296481)
石川 雄一 (財)癌研究会, がん研究所, 部長 (80222975)
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キーワード | 微小乳頭腺癌 / 浸潤 / 転移 / 骨髄細胞 / EP3 |
研究概要 |
今年度の研究は、微乳頭腺構造を有する肺腺癌切除例の凍結標本を集積するとともに、新たに肺腺癌の根治切除症例209例を集積し、それらにおいて、細胞診における縁乳頭腺構造の有無と患者の喫煙歴、合併症の有無などの詳細の臨床情報、臨床診断、病理学的事項及び予後を、診療録などを用いて再調査するとともに、臨床病理学的事項との関連性を再検討した。その結果、I期という早期に分類される肺腺癌症例において、細胞形態的に微乳頭腺構造を示す細胞集塊の出現している一群は、明らかに予後不良であった。さらに、これらは脈管侵襲陽性の頻度が高く、また、臨床的にリンパ節転移が陰性と判断されたものであっても、術後その約半数にリンパ節転移が組織学的に証明された。また、病理標本の検討からは、肺癌の原発巣辺縁部において、微乳頭腺構造が目立ち、さらに、リンパ管ならびに肺胞構造に癌細胞集塊が浮遊しているように存在する特徴が明らかとなった。予後に関しては、I期症例の中で、細胞診により微乳頭腺構造を有する群と有さない群の予後を比較した。その結果、有する群の4年生存率は81%であり、これに対し有さない群は96%で、微乳頭腺構造のある症例は予後不良の傾向であった(P=0.113)。これらの検討の結果、微乳頭腺構造を有する肺腺癌は臨床的にI期と判断されても、その50%ではII期以上の可能性が高く、完全郭清を伴った外科切除に加え、補助治療が必要であることが新たに明らかとなった。なお、これらの検討の結果は、専門雑誌Lung Cancerに掲載予定である。
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