研究概要 |
・平成20年度に肺葉切除以上の肺切除を予定している原発性肺癌症例30例を対象に、手術時に原発巣が存在する切除肺葉に還流する肺静脈より7.5mLの血液を採取する。肺静脈よりの血液採取は、肺静脈に自動縫合器をかけてこれを閉鎖した後に行い、自動縫合器より末梢側(つまり切除肺側)の肺静脈を22G針で穿刺して血液を吸引し、専用の採血管に保存する。同時に末梢循環血液7.5mLを採取し、同様に専用採血間に保存する。採取された肺静脈および末梢血液検体中に存在する循環腫瘍細胞(CTC)を"CellSearch"システムにより分離し、その個数を定量した。 ・その結果、末梢血液中には30例中5例(16.7%)で循環腫瘍細胞が検出され、その個数は7.5mL当たり1個が2例で、2個,3個,16個が各1例であった。一方、肺静脈血内には30例中29例(96.7%)において循環腫瘍細胞が検出され、この個数は7.5mL当たり最大10034個(平均個数1195個、中央値81個)と非常に多くの循環腫瘍細胞が肺静脈内に認められた。末梢血液中循環腫瘍細胞と肺静脈血液内循環腫瘍細胞との間には有意な相関を認めず、また肺静脈血液内循環腫瘍細胞数は組織型・病期(原発巣の進行度やリンパ節転移の程度)・切除標本でのリンパ管や脈管浸潤程度、等との間には有意な相関を認めなかった。また手術後1年以内の再発や死亡と、末梢血液中循環腫瘍細胞や肺静脈血液中循環腫瘍細胞との間にも、現時点では有意な相関を認めなかった。以上の結果は平成21年1月の米国胸部外科学会(STS)で発表し、その要旨は同学会誌(Ann Thorac Surg)にアクセプトされた。 ・平成21年度には症例数を増やしてさらに検討を進めると共に、経過観察期間を延長して予後との関連を検討する予定である。
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