<研究の結果> 研究最終年の本年度は、症例数を昨年度実績報告の30例から当初予定の100例を超えて129例に大幅に増加させた。 (1) 末梢血中循環腫瘍細胞 対象症例129例中20例(15.5%)において末梢血中循環腫瘍細胞が検出された。その個数は7.5mLあたり1個が12例で、2個が6例、3個、16個が各1例であった。 (2) 肺静脈血中循環腫瘍細胞 対象症例129例中121例(93.8%)において肺静脈血中循環腫瘍細胞が検出された。その個数は7.5mLあたり最大10034個(平均個数532.6個、中央値42個)であった。 (3) 末梢血液中循環腫瘍細胞と肺静脈血液内循環腫瘍細胞との間には有意な相関を認めず、また肺静脈血液内循環腫瘍細胞数は組織型・病期(原発巣の進行度やリンパ節転移の程度)・切除標本でのリンパ管や脈管浸潤程度、等との間には有意な相関を認めなかった。 (4) 術後経過観察期間がまだ短いが、手術後1年以内の再発や死亡と、末梢血液中循環腫瘍細胞や肺静脈血液中循環腫瘍細胞との間に、現時点では有意な相関を認めなかった。 <今後の研究の継続> 上記129例の臨床経過観察を行い、再発の有無および再発形式と、末梢血中/肺静脈血中循環腫瘍細胞の関係を検討して行く。この検討により、以下の事項が明らかになる。 (i) 末梢血中循環腫瘍細胞陽性ならば手術適応から外すべきか否か (ii) ほぼすべての症例において肺静脈から全身に向けて腫瘍細胞が散布されたが、これらがどの程度生育し再発を来して行くのか (iii) 肺静脈腫瘍細胞個数が高いで再発が多いならば、手術術式を変更すべきである(すなわち、すべての肺門操作に先立って肺静脈を切離すべきである)。
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