研究課題
平成20年度の研窄では、まず頚動脈狭窄を有する患者の推定死亡率を解析に組み入れることから始めた。一般人の死亡率は年齢の指数関数であらわされることが知られているが、我々のこれまでの研究では、厚労省から発表されている年齢別の死亡率データより得られた、年齢xでの死亡率:P'(x)=e-10.58+0.095xの回帰式を用いて解析してきた。予想された問題点は、こうした一般人の死亡率に比し、CEA candidatesの死亡率は高いことであった。前述の年齢別の死亡率を示す数式に心血管イベントに関するリスク係数(comorbidity index:c)を設定し、年齢xでの死亡率:P(x)=cxe-10.58+0.095xとmodificationを行った。そしてスウェーデンにおけるpopulation-based study(Swedvasc)と比較した結果、c=1が特にリスクを有しない一般人、c=2が平均的なCEA candidates、c=3がhigh risk CEA candidatesの年間死亡率にほぼ近似できる事を確認した。更に、膨大な量に及ぶ頚動脈狭窄の疫学データや頚動脈内膜剥離術(CEA)に関する無作為化比較試験(RCT)のデータを収集し、解析を行い、頚動脈狭窄を有する患者に関するマルコフモデルの作成を始めている。それぞれの健康状態に生活の質調整年(quality adjusted life year, QALY)を設定。手術の効果はQALY gainの形で表現、すなわち手術をした場合の総QALYと手術をしない場合の総QALYの差とする。その結果、基礎解析では症候性頚動脈狭窄では手術の効果は大きいが、無症候性頚動脈狭窄では手術の効果が非常に小さい事が判明しつつある。今後は更に感受性分析を進める予定である。すなわちその解析段階で行った様々な仮定値の検証、推定した仮定値が動いた場合に手術で得られる効果がどの程度変化するかを検討する。同時にこれは得られたモデルの信頼性の確認にもなるはずである。続いて、狭窄度が比較的軽度である例に対しての解析を行う予定である。中等度狭窄(50-69%)、軽度狭窄(30-49%)に関してのデータもRCTから収集可能であり、その他の報告データとあわせて信頼に足る仮定値の決定が可能であると考えている。
すべて 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
AJNR 29
ページ: 1164-1170
Neurol Med Chir 48
ページ: 355-359
J Neurosurg (Pediatrics) (In press)