研究課題
一過性90分中大脳動脈閉塞ラットモデルにおいて、中大脳動脈領域に大きな虚血性病変が形成されるが、そこには7日目をピークとしてマクロファージ様細胞が多数集族している。それらの多くはマクロファージマーカーのIba1、オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカーのNG2を発現する。それゆえ、これらの細胞をBINCS(Brain Iba1+/NG2+Cells)呼ぶ。このBINCSの意義について以下の検討を行った。1)BINCSの由来についての検討蛍光ラット(green-fluorescent protein-transgenic rats)を用いた骨髄への移植実験により、BINCSは骨髄由来であることを明らかにした。2)虚血脳に浸潤するBINCSの意義についての検討虚血負荷2日目に5FUを注入することにより、虚血負荷7日目の脳ではBINCSの集族が著明に減少し、虚血性壊死巣の拡大と死亡ラット数が増加した。一方、虚血負荷2日目に5FUを注入したラットの虚血部に分離したBINCSを移植することで、虚血病巣の範囲が著明に縮小した。3)BINCSの神経細胞保護的因子発現の検討定量的なRT-PCRの結果、BINCSが、神経保護作用をもつbFGF、BMP2、BMP4、BMP7、GDNF、HGF、IGF-1、PDGF-A、VEGFのmRNAを発現していた。ことに、IGF-1のmRNAを高レベルで発現していた。4)免疫染色による組織学的検討免疫組織学的検討で、IGF-1を発現するBINCSは、ラットだけではなく、人の梗塞脳にも認められた。これらの結果から、虚血脳に集族するBINCSは、骨髄由来であり、虚血脳に有利に働き、少なくとも一部は神経保護因子の分泌によることが明らかになった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Cereb Blood Flow & Metabolism 30
ページ: 603-615