研究概要 |
ラット虚血脳中心部には、マクロファージ様細胞が浸潤、集族するが、その多くはanti-ionized calcium-binding adaptor molecule1(Iba1)(マクロファージ/マイクログリアマーカー)並びにNG2コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカーで幹細胞に出現)が陽性であることから、これらをBrain Iba1+/NG2+Cells (BINCs)と名付けた。この細胞は、虚血負荷後3日目より虚血中心部に出現し、7日目をピークとしており、細胞増殖能が高かった。イムノブロットによる検討から、虚血中心部にみられる分子量300kDaと虚血の対側脳にみられる分子量290kDaの2種類のNG2のあることが判明した。また、グリーン蛍光蛋白移植ラットを用いた骨髄移植実験で、BINCsが骨髄由来であることが明らかになった。 虚血負荷2日目に5FUを腹腔内投与(100mg/kg)すると、生食注入群に比して7日目に浸潤するBINCsが激減し、14日目の摘出脳では梗塞による壊死領域が拡大して、高頻度にラットが死亡した。そのモデルの虚血脳内にBINCsを虚血負荷5日目に注入すると、14日後に摘出した脳では、壊死領域が縮小し、死亡するラットもなかった。壊死脳容積を全脳で算出すると、虚血+5FU投与+BINCs注入群は、虚血+5FU腹腔内投与群に比して有意に脳損傷が少なく、コントロール群(虚血+生食腹腔内投与)と同等であった。また、定量的RT-PCRの結果、BINCsはbFGF,BMP2,BMP4,BMP7,GDNF,HGF,IGF-1,PDGF-A,VEGF関連のmRNAを発現し、ことに、IGF-1mRNAを高いレベルであった。これらの結果より、骨髄由来のBINCsは、神経保護的作用を有しており、これは神経保護因子の分泌を介する可能性が示された。
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