くも膜下出血(SAH)中に存在する酸素、また赤血球の崩壊に伴うオキシヘモグロビン(OxyHb)やビリルビン酸化物(BOXes)によって、多くの活性酸素種が産生され、平滑筋細胞、内皮細胞の細胞内外の膜に脂質過酸化が生じ、膜機能の恒常性の障害によって動脈の収縮や微小循環の障害が生じると想像される。脂質過酸化によって生じた酸化リン脂質を強力に分解するPAFアセチルヒドロラーゼ(PAFAH)に注目し、SAH患者CSF中の本酵素の役割について検討を開始した。CSF中には非酵素的に酸化され、膜リン脂質結合型8-iso-PGF_<2a>が生じており、PAFAHはこのリン脂質を加水分解し、遊離型8-iso-PGF<2a>をCSF中放出するが、平成20年度はGC-Msスペクトルを用いて、CSF中の8-iso-PGF<2a>の測定と、CSF中のPAFAH活性測定を主に行い、症候性脳血管攣縮(SVS)-とSVS+群の間の差を検討した。CSF中のPAFAHは血漿型PAFAHであることを確認し、経時的な検討では遊離型8-iso-PGF<2a>濃度上昇に先行してPAFAH活性が増加する傾向を認めた。遊離型8-iso-PGF<2a>濃度、PAFAH活性を同時に測定した総ヘモグロビン量で補正すると、両者ともに発症0-4日、発症5-9日でSVS-群がSVS+群と比較し、高い傾向を示し、PAFAHが膜構造の脂質過酸化の修復に関与している可能性が示された。なお購入物品が高速液体クロマトグラフに変更した理由はCSF中の血管収縮作用を有するADMA (asymmetric dimethlarginine)を測定したいためと、施設内に資料凍結フリーザを確保できたことによる。
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