研究概要 |
くも膜下出血(SAH)患者の脳槽ドレナージ等から経時的に脳脊髄液(CSF)に採取し検討した結果、CSF中のPAF-アセチルヒドロラーゼ(PAFAH)活性は3種類のisozymeのうち血漿型PAFAH由来であることを確認した。また血漿型PAFAHに3種類のgenotypeが存在するが、遺伝子型の分布と症候性脳血管攣縮(SVS)の発生との関係を調べたが、有意な関係は確認できなかった。今年度はさらにGC-MSを用いてCSF中の遊離8-イソプロスタグランジンF_<2a>量(free isoPs)、遊離ヒドロキシリノール酸(free HODE)、遊離ヒドロキシエイコサテトラ塩酸(free HETE)を測定し、PAHAH活性との関係を検討した。SAH発症後0-4日、5-9日、10-14日をそれぞれ早期、中期、晩期とし,PAFAH活性、GC-MSの各測定脂質量をSVS発症群(SVS+)と非発症群(SVS-)で比較した。PAFAH活性は早期と中期でSVS-が高い傾向を示した(早期:p=0.065,中期:p=0.183)。またfree isoPs(早期:p=0.119,中期:p=0.039)、free HODE(早期:p=0.07,中期:p=0.122)、free HETE(早期:p=0.372,中期:p=0.166)とSVS-で有意に高いか、あるいはその傾向を示した。また、PAFAH活性と各脂質量との相関を検討した結果free HETE以外はすべて有意な相関が得られた(free isoPs:r=0.712,p<0.0001,free HODE:r=0.819,p<0.0001,free HETE:r=0.216,p=0.109)。今回は血漿型PAFAHが脂質過酸化の進展を抑えて脳血管攣縮発症を抑制する可能性を示唆する結果を得た。
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