研究概要 |
平成22年度にもくも膜下出血(SAH)患者の脳脊髄液(CSF)の血漿型PAF-acetylhydrolase(PAFAH)活性またPAFAHの代謝産物であるCSF中遊離8-iso-PGF2α(free 8-isoPs)、遊離ヒドロキシオクタデジエノイック酸(free HODE)や遊離ヒドロキシエイコサテトラ塩酸(free HETE)などの脂質過酸化物をGC-MSスペクトルを用いて測定した。症候性脳血管攣縮発生群(SVS+)と非発生群(SVS-)で発症後の時期による比較を行うと、SVSが発生するday0-4,day5-9でSVS-がSVS+にくらべてPAFAH活性、free8-isoPs、free HODE、free HETEが高かった。またPAFAH活性と各酸化物の相関は極めて良く、SAHにおいてはCSF中で酸化リン脂質の加水分解にPAFAHが関与し、酸化ストレスを源で断つことにより、脂質過酸化の末梢血管あるいは脳実質へのチェーンリアクションを防ぎ、そのことによる脳血管攣縮の予防に関与していることが証明された。PAFAHはCSF中のものはすべて血漿型であることがわかった。血漿型PAFAHの遺伝子型とSVSの関係を検討したが有意な相関は認めず、PAFAH活性の調節の機構はいまだ不明である。これまでの本件研究成果は国際的雑誌Neurosurgeryにすでに投稿済みである。さらに検討を進める予定である。
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