研究課題/領域番号 |
20591698
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
蓮尾 博 久留米大学, 医学部, 准教授 (90172882)
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研究分担者 |
武谷 三恵 久留米大学, 医学部, 助教 (30289433)
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キーワード | 頭部外傷モデル動物 / 液体打撃法 / 脳損傷 / 神経保護薬 / 長期増強 / 海馬核 / エモジン / 大黄(だいおう) |
研究概要 |
本研究は新しい神経保護作用の期待できる薬物(大黄の主有効成分であるエモジン)が本当に外傷性脳損傷(TBI)の中枢神経系ニューロンの機能異常を改善し、新しい神経保護薬として効果があるのかについて、TBI実験モデル動物を用いて検討するものである。TBIの治療困難な後遺症の一つとして記憶障害があげられる。本研究では記憶や学習の細胞レベルでのモデルと考えられている長期増強(LTP)を指標として、TBI後のシナプス可塑性の障害およびそれに対するエモジンの効果について研究している。今年度は研究分担者が初めて頭部外傷モデルを作製するにあたり、液体打撃後死亡することが頻発したが、麻酔法を工夫することにより、安定して頭部外傷モデル動物の作製ができるようになった。予備実験として、エモジンの投与による毒性や投与方法を検討した。その結果、安全性や吸収性は確認された。次に液体打撃を与えて1週間後に頭部外傷モデルラットから得られた海馬核を含む脳スライス標本において、電気生理学的手法を用いて海馬CA1領域における興奮性シナプス後電位を記録し、高頻度電気刺激によるLTP誘発実験を行った。Shamコントロール群に比べて、外傷群においてLTPの誘発が減弱しているのが確認された。エモジンの効果をみるために、液体打撃の10分後にエモジン(10mg/kg)を腹腔内に投与し、1週間後に海馬スライス標本におけるLTPについて検討した。その結果、TBI後にも関わらず、エモジンを投与した群からのスライス標本では、Shamコントロール群と同じ程度のLTPが観察された。このことは、外傷後早期にエモジンを投与するとLTPの誘発障害が改善されることを意味する。これを踏まえ、エモジンの作用をさらに検討するため低濃度のエモジンの効果、投与時間を遅らせた場合の効果について現在検討中である。
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