われわれはこれまでの実験結果から、クモ膜下出血後の脳血管攣縮発生、維持に血管平滑筋細胞内の蛋白リン酸化酵素C(PKC)、なかでもそのisoformであるPKCδとPKCαの両者が重要な働きをしていると報告、その両者の阻害剤であるM-62885という化学物質が脳血管攣縮の予防ならびに治療に効果があると考え、この物質を含有するpelletを作り、動物実験モデルに使用して、われわれの仮説を検証することを本研究の目的とした。この目的にためにM-62885をpelletにして髄腔内に留置しそれによってPKCの両者のisoformを抑制して脳血管攣縮を予防しようとしたが、pelletの作成が思うように進まないため、それにかわる方法として、微量注入ポンプを皮下に埋め込み、先端のチューブを犬大槽の髄腔内に設置して、脳血管攣縮の予防と、脳血管のPKC isoformが要さされるかの実験を行っている。微量注入ポンプには様々な濃度のM-62885を注入して、殿濃度が至適濃度であるか見極めるようにしたい。まだ実験のnの数が十分ではないので、統計学的処理を行える段階ではないが、印象としてはかなり効果があると思われる。今後はさらに実験のnを増やし、脳血管攣縮の結果とPKC isoform抑制効果の結果を統計学的に処理できるまでにしたい。それによって、この治療法の有効性について判定が行えるようにしたいと考えている。
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