本研究では、ナノ粒子を虚血疾患に用いた新しいコンセプトによる治療方法を開発することである。 H20-21年度は新規開発した糖鎖修飾リポソームが血管形成部位に集積することを動物モデルを用いて証明した。血管形成術部位狭窄ラットを作製して、これにドキソルビシン内包糖鎖修飾リポソームを静脈内投与して狭窄予防の治療効果を確認した。これらの研究は複数の学会で発表され、医学系の新聞2紙で報道された。 H22年度は上記血管狭窄予防の実験系でリポソームの薬物動態的及び薬力学的解析を行なった。糖鎖修飾リポソームによって血管形成部位の血管へは静脈内投与量の0.01%程度の薬剤が集積されている事が判明した。これに対してリポソームに内包しないfreeの薬剤の場合、測定不能程度の集積であった。また虚血疾患治療へのナノ粒子の応用について更に研究を進めた。そして脳梗塞治療に有効なナノ粒子の開発研究にも成功した。この研究は日本DDS学会で発表され、医学系の新聞1紙で報道された。 現在、ナノテクノロジーの臨床応用研究は注目される分野であり、ナノ粒子の臨床治療への応用はそのメインの分野になるテーマと思われる。そして虚血疾患は悪性腫瘍に並ぶ重要疾患であることを考えると本研究の意味は大きいと思われた。
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