悪性グリオーマは脳腫瘍の中でも発生頻度が高く、術後放射線療法や化学療法など集学的治療が行われるが、生命予後は極めて不良である。その原因としてグリオーマ細胞の浸潤性の強さにより、手術にて全摘したにもかかわらず約9割に局所再発を来すことが考えられる。そこでグリオーマ細胞の浸潤を防止し、一カ所に遊走沈着させることができれば効率的な治療を行うことができると考え実験計画した。 そのため腫瘍摘出術後、前処置としてグリオーマ細胞に間接的細胞接着因子増強作用があることが報告された分子標的治療薬を摘出面に塗布し腫瘍細胞を凝集させ、高濃度プロテイオグリカン人工基質を重層し、グリオーマ細胞を吸着させ治療する実験モデルを開発する。 平成20年度はin vitroの実験系の確立をめざし以下の実験を行った。 1. あらかじめC6グリオーマ細胞を浸潤させておいた人工基底膜に、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の1つであるAG1478を投与し、C6グリオーマ細胞の殺細胞効果と間接的N-カドヘリン増強作用によりC6グリオーマ細胞を凝集させる。 2. C6グリオーマ細胞を吸着することが確かめられているプロティオグリカンの高濃度人工基質を重層し、人工基質へ腫瘍細胞を遊走沈着させる。 3. 人工基底膜からC6グリオーマ細胞を高濃度プロテイオグリカン人工基質にすべて吸着させることを確認する。 以上をin vitroの実験系を確立する。 結果として (1) 2週間培養にて病理標本が得られた。 (2) 画像解析ソフトを用いてECMatrigelに残存するC6-GFPと人工基質に遊走したC6-GFPをcell countするし、プロティオグリカンの入っていない人工基質と比べて約2倍の細胞吸着率があることを確認した。 以上よりAG1478を投与することにより、高濃度プロティオグリカン人工基質へのC6-GFPの沈着を確認した。
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