研究課題
本研究は、これまでに同定してきた多形膠芽腫に対する治療抵抗性関連遺伝子群から、腫瘍の治療耐性と増殖の鍵となっている分子を特定することを目的としている。まず、これらの遺伝子の発現をヒト悪性神経膠腫において確認する前段階として、従来から行ってきた遺伝子解析による神経膠腫の類型分類を、当該年度においても引き続き施行した。臨床検体においては、IDH遺伝子、p53遺伝子の変異、染色体1p19qのLOH(ヘテロ接合性の喪失)の同定などをするとともに、MGMT遺伝子プロモーターのメチル化をMethylation-specific PCR (MSP)法により同定し、それぞれの異常と予後との関連を検討した。染色体LOHに関しては、患者血液が不在のものに関しては、MLPA法による同定を行った。対象は昨年度よりさらに100例以上追加し、膠芽腫(GBM)144例、退形成星細胞腫(AA)41例、びまん性星細胞腫(DA)53例、乏突起膠細胞系腫瘍69例、毛様細胞性星細胞腫(PA)7例の合計314例の神経膠腫であった。IDH遺伝子変異の頻度はGBM17例(12%)、AA11例(27%)、DA23例(43%)、乏突起膠細胞系腫瘍50例(72%)、PAO例(0%)と合計101例で認めた。このうち、IDH2遺伝子の変異は5例(2%)のみであった。WHO Grade 2と3の神経膠腫においてはMGMT遺伝子プロモーターメチル化とIDH遺伝子変異に相関が見られた。予後との関連を調べると、特にGrade3の退形成星細胞腫で1p19qLOHを認めない群にて、IDH遺伝子変異と無増悪再発期間が有意に相関していた。これら臨床検体と、その遺伝子変異と予後との関連などの臨床データは、今後、耐性関連候補遺伝子の発現量を調べる事で、これら遺伝子の機能解析をする上での非常に有効な基礎データを提供すると考えられる。
すべて 2010
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Cell Cycle
巻: 9巻 ページ: 1661-1662
Genes & Development
巻: 24巻 ページ: 1731-1745