研究概要 |
【目的】グリオーマ内在腫瘍幹細胞が分離同定され、これが腫瘍の起源であるとされている。グリオーマ内在幹細胞の生物学的な性質、遺伝子変異についてはよく知られていないことから、我々はグリオーマ細胞株および手術検体から幹細胞のマーカーであるCD133の陽性細胞の分離を試みた。 【方法】14例の神経膠腫(びまん性星状細胞腫1例、退形成性星細胞腫2例、神経膠芽腫11例)の手術検体と4種類のグリオーマ細胞株(U87,U251,T98G,SNB19)を用いてautoMACS Pro SeparatorによりCD133陽性細胞を分離抽出しstem cell mediumでの長期培養を試みた。 【結果】CD133陽性細胞は手術検体では0.18%から87%と検体によるばらつきが大きく、グリオーマ細胞株では平均0.66% (0.35%-1.04%)であった。びまん性星状細胞腫、退形成性星細胞腫でstem cell medium内でのspheroidの形成を観察できたものはなく、神経膠芽腫で2例にspheroidの形成を認め、うち1例で3ヶ月を超える長期培養に成功した。一方で4種類の細胞株のうちU87,T98GでCD133陽性細胞がstem cell mediumでneurosphereを形成した。手術検体と細胞株いずれにおいても陰性細胞ではneurosphereの形成は認められなかった。 【結論】CD133陽性グリオーマ内在腫瘍幹細胞の分離とstem cell medium内のspheroidの形成と長期培養に成功した。今後は確立したグリオーマ内在幹細胞の性質と遺伝子変異を調べる予定である。
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