研究概要 |
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)は、トリプトファンから強い免疫抑制作用を持つキヌレニンへ変換させる代謝酵素である。このIDOの作用を阻害することは、腫瘍の免疫回避能を減弱させ、結果として腫瘍増殖を抑制する可能性がある。IDOの腫瘍内存在が予後悪化と関連することが、ovarian carcinoma, endometrial carcinomaとcolon carcinomaにて報告された。悪性グリオーマではグリオーマ細胞にIDOの発現が見られることは確認されているが、その免疫抑制は明らかにされていない。IDOが悪性グリオーマ免疫回避機構に関連しているかを解明することは、悪性グリオーマの免疫療法の発展に重要な課題と考えられる。 平成21年度は、グリオーマのグレード別のIDO発現について、手術摘出標本を材料として、免疫組織染色にて検討した。WHOグレードIIのastrocytoma15例中の2例(14.3%)、グレードIIIのanaplastic astrocytoma20例中の9例(45%)、グレードIVのglioblastoma39例中の19例(58%)にIDOの高発現を認めた。統計学的に有意に、悪性度の増加に伴いIDOの発現が上昇していることが確認された。グリオーマでは、悪性度に伴いIDOの発現は増加し、より強い免疫回避機構を獲得している可能性が示唆された。今後、IDOの発現と悪性グリオーマの予後との関連を検討する予定である。
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