研究概要 |
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)はトリプトファンの代謝酵素であるが、強い免疫抑制作用を持っている。腫瘍に存在するIDOは、CTLやNK細胞の抗腫瘍作用を抑制するだけでなく、免疫抑制作用を持つTregを活性化し、腫瘍の免疫回避機構に関与している。Ovarian carcinomaやcolon carcinomaにおいては、IDOの発現がその予後悪化因子であることが知られてきており、IDOの発現を抑制することはガン患者の免疫機能を回復させ治療の効果を増強させる可能性がある。前年までの本研究では、グリオーマでは、組織学的な悪性度の上昇に伴い、IDOの発現が増加することを明らかにした。本年度は、悪性グリオーマのIDOの発現とその予後との関連について検討した。手術摘出後、同一のプロトコールにて化学療法と放射線治療が行われた18例の退形成性星細胞腫、23例の膠芽腫を対象とした。手術摘出標本から、IDOの免疫組織染色を行い、その発現をlow, medium, high群に分け、腫瘍無増大期間と生存期間を比較した。単変量解析では、退形成性星細胞腫において、各郡の予後に差はなかったが、膠芽腫においては、high群は、low群と比べ、腫瘍無増大期間、生存期間共に統計学的に有意の差を持って短縮していた。多変量解析では、術前KPSと手術摘出度が膠芽腫において予後悪化因子であったが、IDO発現は関連がなかった。膠芽腫においても、他のガンと同様にIDOの高発現はその予後の悪化因子となっていた。従って、IDO抑制剤の悪性グリオーマ患者に投与することは、悪性グリオーマの免疫抑制状態を回復させ、抗癌剤との併用効果が期待できる可能性が示唆された。今後、動物実験にてIDO抑制剤の悪性グリオーマに対する効果を検討する予定である。
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