研究課題
本研究は、良性脳腫瘍、特に髄膜腫における包括的なエピジェネティクス解析をおこない、腫瘍の本質解明に結びつけることが目的である。本年度は下記の研究を行った。1. 過メチル化遺伝子同定のための一次スクリーニングとして、grade 1髄膜腫6例とgrade 2髄膜腫6例を用い、MCAM (Methylated CpG islands amplification microarray)を施行した。2. 過メチル化と判定された遺伝子はgrade 1で250/6157 gene (4.06%) 445/15137 loci (2.94%)、grade 2で323/6157 gene (5.25%) 567/15137 loci (3.75%)であった。3. 両群間の差の大きい14遺伝子を抽出しpyrosequencingを行った。4. 6遺伝子がMCAM結果と相関を示し、HOXA5ではgrade 1優位に、CHADではgrade 2優位に過メチル化傾向がみられ、REC8、CLIC6、HIF3Aでは全体に高いメチル化状態を示した。5. 著明な過メチル化の認められたHIF3A遺伝子について、29臨床検体を用いてReal-time RT PCRにて発現解析を行った。6. 2例でcontrolより高発現、2例でcontrolと同程度の発現、25例および細胞株2系統では著明な発現低下がみられた。7. 細胞株にメチル化阻害剤である5-Aza-2'-deoxycytidineを添加したところ、HIF3Aの発現が回復することが確認された。本研究ではDNAメチル化によりHIF3A発現が抑制されていることが示された。HIF3Aは低酸素誘導因子の発現を抑制する可能性が示唆されており、HIF3Aの強制発現が腫瘍増大や血管新生等に与える影響についてさらに検討する予定である。
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