研究概要 |
本研究は、脳腫瘍のうち最も頻度の高い髄膜腫の包括的エピジェネティクス解析からバイオマーカーを抽出し腫瘍の本質解明に結びつけることが目的である。本年度は下記研究を行った。 1.grade 1 20例とgrade 2 10例を用い、Methylated CpG islands amplification microarray (MCAM)により6157遺伝子、15137CpGでのメチル化解析を行った。 2.microarrayデータはbisulfite pyrosequencing法にて検証し、global metbylation statusの指標であるLINE-1遺伝子のメチル化についても定量化した。 3.異なるvalidation set (n=20)にて追加検証を行った。 4.MCAMの結果、3群のクラスター形成がみられ、クラスター1に対して2,3では高メチル化遺伝子の集積が認められた(165 vs 323,345 genes, P<0.001)。 5.再発群、非再発群、コントロールのLINE-1メチル化平均値は61.8%,65.5%,70.0%であり、腫瘍ではやや低く、再発群ではさらに低下する傾向を認めた 6.クラスター1を低メチル化群、クラスター2,3を高メチル化群と再分類すると、高メチル化群には男性の全例と再発症例の90%が含まれた。 7.両群間でメチル化差の大きい遺伝子を抽出し定量化を行い、5遺伝子で群間の差を確認した。 8.このうち、3遺伝子以上にメチル化を認める群では有意に高い再発率を示した。 9.得られた遺伝子の免疫染色では、臨床腫瘍検体での発現の違いは未だ確認できていない。 髄膜腫はDNAプロモータ領域のメチル化状態により組織型と独立してsubgroupを形成し、高メチル化群では高い再発率を示す。複数遺伝子のメチル化状態、LINE-1メチル化レベル評価が、再発リスクの予測マーカーとなりうると考えられる。
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