研究概要 |
悪性グリオーマにおいて, Wntシグナルの発現がいかなる状態であるか,まずは,網羅的にその状況を把握するため,ヒトグリオーマから培養系に移した腫瘍細胞G8M(悪性上衣腫), G5M(膠芽腫), G17N(膠芽腫)を用いて各Wntの発現を調べた. Wnt1, Wnt2, Wnt2B, Wnt3, Wnt3A, Wnt4, Wnt5A, Wnt5B-2, Wnt6, Wnt7A, Wnt7B, Wnt8A, Wnt8B, Wnt9A, Wnt9B, Wnt10A, Wnt10B, Wnt11のプライマーを準備し,各Wntの発現を定量PCRで調べた.その結果,mRNAのコピー数比として,三種類の細胞ともWnt5Aが最も多く,全体の50%以上を占めていた.その他, Wnt11, Wnt5B, Wnt7A, Wnt7B, Wnt2Bが認められた. 一方,抗体による組織標本の検索では, Wnt2, Wnt2B, Wnt4, Wnt5A, Wnt6, Wnt7A, Wnt10Aを用いた免疫染色を膠芽腫組織を中心に行った.その結果, Wnt2, Wnt2B, Wnt5A, Wnt6, Wnt10Aが手術摘出グリオーマに確認できた. 現在までにWnt11が膠芽腫を中心とした悪性グリオーマに発現していることが示唆されたので,その発現が,細胞浸潤,細胞移動にどのような働きを持つか,検討した.細胞株としてU251を使用し,Wntllの抑制手段としてsiRNAを用い,スクラッチアッセイを行った.その結果, Wnt11の発現を抑制すると,腫瘍細胞の細胞移動が低下することが確認された.
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