研究概要 |
細胞の増殖/発癌に関するシグナル伝達と細胞の運動(浸潤)に関係するシグナル伝達が互いに関連するWntについて,以下の項目を検討した 1.mRNAレベルとタンパクレベルでWnt,Frizzled発現の解析を行い,中心的シグナル物質を特定した 2.組織学的免疫染色を中心に腫瘍の悪性度とWnt発現の関係を解析し,その関係を明らかにした 3.astrocytic tumorにおいてWntシグナルがどのように作用しているかを調べるため,増殖能,細胞移動能などについて検討した.具体的にWntタンパクの過剰な環境や,Wntの活性をブロックした場合の増殖や腫瘍細胞浸潤への影響を検討した 結果 1.グリオーマ培養株では,Wnt-5a,Frizzled-6の発現が複数の腫瘍株に共通して特に高かった 2.悪性グリオーマ腫瘍組織(手術標本)においてWnt-5aの発現が強く認められ,その発現レベルは免疫染色上も悪性度と相関しており,グリオブラストーマで高くなっていた 3.Wnt-5aをRNAiで抑制すると,腫瘍細胞移動能が低下し,細胞増殖能も低下した.またWnt-5aを添加すると,細胞移動能とmatrix metalloprotease-2の活性が上昇した 結論 悪性astrocytic tumorにおいて,Wnt-5a,Frizzled-6のシグナル伝達が推測され,Wnt-5aの発現が,腫瘍細胞増殖能,細胞浸潤能(細胞移動と組織matrix分解)に関係していることが確認された
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