研究概要 |
我々は下垂体腺腫の血管新生の機序のひとつとして、下垂体腺腫細胞が分泌するstem cell-derived factor (SDF)-1に着目した。このchemokineにより骨髄で産生されるendothelial progenitor cellを腫瘍局所に誘導し(homing effect)、下垂体腺種の血管新生を促進する事と、さらに種々のSDF-1のreceptorを介した下垂体腺腫の未知の細胞内シグナルを解明することで、下垂体腺腫の成長におけるSDF-1の機能を解明することを目的として研究を始めた。 (1)tissue microarrayを用いた下垂体腺腫におけるSDF-1発現の定量的解析 申請者はすでに下垂体腺腫組織の手術標本をパラフィンブロックとして100例近く保存しており、同時に台帳に年齢、性、subtype、サイズ、臨床上の特徴を始めとしてまとめてある。Tissue microarrayを このパラフィンブロックから作成し、SDF-1の組織での発現とpositive controlとしてのbeta-actinとの発現対比率を蛍光免疫染色から解析し、検討した。 (2)CXCR4, CXCR7(SDF-1 receptor)ノックダウン細胞と強制発現細胞の確立 ヒト樹立下垂体腺腫細胞(HP-75)にCXCR4, CXCR7のfull length cloneををtransfectして強制発現させた細胞と、これらをターゲットとしたRNA干渉(siRNA法)でノックダウンした細胞を作成した。これらの細胞に対してSDF-1を培地中に加えれば、比較することでSDF-1の刺激によってreceptorであるCXCR4もしくはCXCR7を介した細胞内のシグナルをreceptor別に解析可能になることが期待された。大腸菌を用いたcDNA cloneの増幅と細胞へのvectorを利用したtransfectionなどは申請者の施設に稼動中のP2 levelの実験室において行うが、研究代表者(吉田)は以前よりそれらの機器を使用して研究を進めており、操作も習熟している。
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