研究概要 |
椎間板障害に対する治療には従来から脊椎固定術や摘出術などの外科的治療が普及し一定の成果が確認できているが,術後の新たな隣接椎間板障害の出現や機能障害の報告が広く認知され,その限界と代替医療の可能性に注目が集まっている. 椎間板細胞は非増殖細胞である心筋細胞に似ており,終末分化した状態に近く,その細胞分裂能は低い.また角膜組織と同様に,中心部は無血管野で周囲からの拡散により栄養状態を維持している特殊な組織でもあるが,その詳細な細胞増殖・維持機構は依然不明である.椎間板細胞は終末分化した心筋細胞と同じくG0期からG1期への移行ができずに細胞分裂ができないかあるいはそのスピードが遅いと推察し,細胞周期関連遺伝子であるサイクリンとサイクリンに結合して活性化されるリン酸化酵素(サイクリン依存性キナーゼ,CDK)およびE2Fなどの細胞周期を正に制御する因子の発現・活性を調べ,その細胞周期制御機構を明らかにすることを本研究の目的としている. 平成21年度は13週SDラットより椎間板細胞を単離・継代し,血清存在下,非存在下における実際の発現変動遺伝子の網羅的探索を行った.具体的には血清飢餓開始48時間後に細胞を回収しRNAを抽出した後,DNAマイクロアレイを用いて血清存在下での場合と比較し,その発現変動遺伝子の探索を行い,さらに統計学的に有意差のあった遺伝子群をPCRアレイを用いて再確認した.その結果細胞周期関連,癌関連遺伝子の有意な発現変動を認めた.今後はこれらpathwayに属する遺伝子群をターゲットとした機能解析を行う予定である.
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