研究概要 |
脊椎加齢性変化で最も特徴的な変化に椎間板変性が挙げられる。椎間板は本来髄核、線維輪の二重構造を有しているが、変性すると構造が破綻する。椎間板ヘルニアは変性した椎間板から発症し、炎症性サイトカインであるTNF-αやTWEAKなどが炎症を惹起し、活性化されたマクロファージが椎間板細胞と相互作用を起こす。すると、血管誘導因子であるVEGFが誘導され、炎症は賦活化され、MCP-1を介して活性化マクロファージが炎症巣に発現し分解酵素であるMMPが誘導され、ヘルニアマトリックスを分解し、最終的には、椎間板ヘルニアは退縮することを明らかにした。また、若年から高齢者マウスを使用し、年代別の血管誘導能を検討すると、1、TNF-αはTNFレセプターIを介し、NF-kappaB経路でVEGFを椎間板細胞から発現誘導していた。さらにVEGFの産生量は刺激するTNF-αの濃度・時間に依存していた。2、TNF-α刺激によって誘導されるVEGFの産生量及びIn vitroのAssayで測定した血管増生能は実験マウスの経年的に減少した。以上が明らかになった。そこで、今回はマクロファージ走化能を有するMCP-1と分解酵素であるMMP-3の発現における加齢の影響について詳細な検討を行った。すると、1、 TNF-αとTWEAK刺激下での培養上清中のMCP-1 、MMP-3の産生量は、高齢マウス由来椎間板使用例ほど低下していた。2、椎間板組織内におけるMCP-1、 MMP-3のmRNA、タンパク発現量は高齢椎間板使用例ほど低下、免疫染色による発現細胞数でも同様の結果であった。また、3、 MMP-3欠損マウスを使用すると、高週齢マウスでもアグリカン、プロテオグリカンが維持され、変性の進行が抑制されていた。よって、椎間板ヘルニアの炎症過程において、VEGF, MCP-1, MMP-3は加齢により誘導能が低下していくため、退縮過程も遅延することが予想された。
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