雄1頭より採取した坐骨神経を直径1mm-1.4mmのfuniclesに分割し、ポリフェノール液中に摂氏4度で28日間保存し、DMEMに2日間浸漬させてポリフェノールを洗い流し、移植直前に長さ3cmに切断した。雌犬6頭の長さ3cmの右尺骨神経片を切除してできた神経欠損をポリフェノール処理した坐骨神経片funicles 1-2本で架橋した(ポリフェノール同種神経移植モデル)。その後手術当日よりFK506を毎日1回0.02mg/Kg術後12週間筋注した。移植後12週で、右尺骨神経の神経伝導速度および短小指外転筋のM波振幅を測定した。さらに移植神経を遠位神経縫合部の1cm遠位の尺骨神経まで含めて採取した。左尺骨神経に作製した3cm自家新鮮神経移植モデルについても同様の電気生理学的的検査と神経組織の採取を行った。また屠殺時に各犬の静脈血を採取し、FK506濃度を測定した。移植神経の遠位神経縫合部の1cm遠位の尺骨神経断面の組織形態学的検索を行った。移植神経は直ちに凍結保存して、分子生物学的検索用に保存した。 結果:最初の4頭の結果を示す。ポリフェノール同種神経移植モデル群の神経伝導速度と小指球筋のM波振幅は、それぞれ自家新鮮神経移植モデル群の平均87.3%と70.5%であった。またFK506濃度は11-16.5ng/mlであった。 考察:ポリフェノール同種神経移植群でも新鮮神経移植群の70-80%の成績を得ることが出来た。犬同種組織移植でのFK506の有効血中濃度は16-26ng/mlと報告されており、4頭中2頭でこの値を越えていた。5頭目以降FK506の1日筋肉注射量を当初の0.02mg/Kgより0.01mg/Kgに引き下げて実験を行っている。
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