研究概要 |
本年度は、脊髄への圧迫時間別(20分・40分)に、どのような組織学的変化が脊髄内で起きているかを検討した。血液脊髄関門の破綻を調べるためのEvans Blue染色を圧迫後24, 72時間後に、炎症を引き起こすマイクログリアの増殖を調べるためにOX-42染色を72時間後に、また、細胞のアポトーシスを調べるためにTUNEL、染色を72時間後に行った。 Evans Blue染色は、sham群は染まらなかったが、20分圧迫群では灰白質を中心として、軽度の漏出が認められた。40分圧迫群では、24時間後にさらに高度な漏出が認められたが、72時間後には漏出は認められず、障害を受けた血管が修復されたと考えられた。 OX-42染色では、sham群ではほとんど陽性細胞は無かったが、20分圧迫では灰白質を中心に陽性細胞の増殖が認められ、40分圧迫群ではさらに高度な増殖が認められた。 TUNEL染色では、sham群では生理的と思われる陽性細胞が少数認められたが、20分圧迫群では灰白質を中心に陽性細胞の増加を認め、40分圧迫群ではさらに高度な増加を認めた。 以上の結果より、脊髄虚血後には24時間以内に血液脊髄関門の破綻が起こり、アルブミンなどの血漿成分が漏出している可能性が示唆された。さらにその後損傷部位でのマイクログリア増殖を含む炎症が起こり、周辺細胞のアポトーシスが起こって運動機能障害を引き起こしている可能性が示唆された。20分間の虚血では、血流回復により、それらの障害が軽微であったため運動機能障害が起こらず、40分間の虚血では運動機能障害が起こるほどの炎症やapoptosisが起こったのではないかと考えられた。 まとめ。脊髄虚血により血液-脊髄関門の破綻が起こり、その後の炎症、アポトーシスへと繋がる可能性が示唆された。
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