研究概要 |
これまで、左手の3時間強制安静時に短拇指外転筋(APB)を動かすようイメージさせた場合とイメージさせない場合(コントロール実験)と比較して脊髄前角細胞の興奮性がどのように変化するかをF波を用いて観察してきた。また、イメージする際にビデオ画像を見ずにイメージさせた場合(実験2)とビデオ画像を見ながらイメージさせた場合(実験3)を比較してF波の経過に違いがあるか観察した。昨年度までの研究結果を要約すると、イメージさせない場合は脊髄前角細胞の興奮性が低下するのに対して安静時中にAPBの動きをイメージさせた場合はビデオ画像を見るかどうかに関係なく興奮性が維持されていた。今年度は大脳からの下行性インパルスに対する脊髄前角細胞の反応性がビデオ画像を見せた場合と見せない場合では異なるのではないかと考え、APBの動きをイメージさせながらF波を記録した。その結果、APBのF波の出現率(%)と振幅(μV)の経時的変化は、コントロール実験では安静前(50.2%,140.5μV)→安静3時間後(38.7%,92.5μV)であり安静後に出現率、振幅ともに有意に低下した(p<0.01)。実験2においても、安静前(31.9%,88.8μV)→安静3時間後(25.8%,60.5μV)と安静後に振幅、出現率ともに有意に低下したのに対し、実験3では安静前(36.4%,112.1μV)→安静3時間後(38.8%,93.6μV)と安静後に振幅、出現率はともに有意な低下を示さなかった。強制安静後のfMRIは昨年度までにコントロール実験と実験3終了後のfMRI解析を行ったが、本年度は実験2終了後のfMRIを解析した。その結果、実験2と実験3は同様の活動性を示し、コントロール実験に比較して安静による大脳活動領域の抑制を減ずるが、実験3において強制安静前後で脊髄前角細胞の活動性が維持されていた経過とは異なる経過を示していた。
|