研究概要 |
生体内における性ホルモン反応性の検討 ・マウス転移モデルを用いた転移巣と原発巣における性ホルモン受容体発現と薬剤反応性の解析 骨肉腫の予後を規定するのは原発の腫瘤ではなく、肺を中心とする主要臓器への遠隔転移である。ヌードマウスを用いた解析系においては局所進展の解析は可能だが、生命予後を規定する転移モデルが得られない可能性があるため、Dunnマウス骨肉腫細胞株より樹立された肺転移変異株LM8 (lung metastatic variant 8) (Int J Cancer, 76 (3) : 418-22, 1998)を用いたマウス転移モデルの解析を行った。この細胞株は均一なクローン細胞群ではなく、様々な性質を持つheterogenousな細胞集団である。この性質を利用して、皮下注射後に形成された肺転移巣と原発巣(皮下注射部)で性ホルモンと関連物質の投与に対する反応を確認した。 LM8においてエストロゲン受容体α,βの発現があることをRT-PCRにて確認した後に、雌雄のマウスに対してLM8を接種し、原発巣(皮下注射部病変)と肺転移病変の進展と生命予後の解析を行った。この結果、雌マウス群の生存期間は雄マウス群よりも有意に長いことが確認された。さらに、この生存期間の差は雌の卵巣切除によって消失することが確認された。この結果は、エストロゲンが生存期間の延長に直接寄与することを示すと考えられ、これまでのヒト症例における予後・発症頻度などの性差を裏付けるものとなる可能性があると考えられる(投稿準備中)。
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