研究概要 |
1.研究目的; 滑膜肉腫は15〜40歳の若年に好発する比較的頻度の高い肉腫の一つで、肺転移、リンパ節転移をきたすこともあるため、腫瘍発症メカニズムの基盤的解明は重要な課題になっている。近年、本腫瘍に特異的な染色体転座が同定され、第18染色体上のSYT(SS18)遺伝子とX染色体上のSSX遺伝子の融合型遺伝子SYT-SSXが滑膜肉腫の95%以上で検出されることが明らかになり、我々はこれらの遺伝子の機能解析を進めて来ている。本申請では、染色体転座により生じたSYT-SSX蛋白複合体が直接作用し発現を抑制している遺伝子を同定し、シグナル伝達経路を明らかにすることを目的としている。 2.実施計画; (1)SYT-SSX蛋白により発現抑制または発現誘導される遺伝子群の同定;ヒトHEK293細胞にSYT-SSX融合遺伝子を導入した遺伝子発現誘導型細胞株を作成し、SYT-SSX遺伝子の発現により直接影響を受ける遺伝子群の解析を行う計画である。 (2)SYT-SSX蛋白の局在解析;SYT-SSX蛋白の局在を阻害させる物質、遺伝子等を検索し、腫瘍の抑制効果を検討する計画である。 3.研究成果; (1)Doxcyclin制御プロモーターの下流にSYT-SSX遺伝子を持つ遺伝子を作成した。ヒトHEK293細胞に導入後、Doxcyclinにより安定した発現制御を受けるクローンのスクリーニングを行った。最も良いクローンを使い、Doxcyclinの存在下、非存在下で導入遺伝子の発現を確認後、RNAを回収した。現在、アレイ解析を進行中である。 (2)SYT, SSXおよびSYT-SSX蛋白に蛍光蛋白を融合発現するプラスミドを作成した。滑膜肉腫細胞株に導入後、各蛋白の局在を確認できる系を作り上げた。ヒストン脱アセチル化剤をはじめとする様々な薬剤を添加し、SYT-SSX蛋白の局在を変化させる検討を進めている。
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