研究概要 |
本研究は,テロメラーゼ阻害剤による新しい骨肉腫の治療法の開発を目的としている.ヒト由来骨肉腫細胞に対する阻害剤(TMPyP4:50μM)の抗腫瘍効果ならびにテロメア因子を最終的に検討し,in vitroでの研究を終了した. 1. 抗腫瘍効果 MTT assayで評価した.HOS(投与後4日:p=0.0001),SaOS2(p<0.001),U2OS(p<0.001)で有意な細胞増殖抑制を認めたがMG63(p=0.11)では抑制効果はなかった. 2. テロメア長 細胞のDNAを抽出,処理後サザンハイブリダイゼーションを行った.阻害剤投与後4日目にテロメア長を測定した.HOS(p<0.01),SaOS2(p<0.01),MG63(p<0.05)で有意に短縮した.U2OS(p=0.16)では有意な短縮はなかった.治療後の平均テロメア長はHOS(5.5kb),SaOS2(4.9),MG63(11),U2OS(40)であった. 3. テロメラーゼ活性 TRAP法により活性を測定した.HOS(p=0.0001)およびSaOS2(p<0.001)では有意な低下を認めたが,MG63(p=0.11)では有意差を認めなかった. 以上の実験結果より,テロメラーゼ活性を有する骨肉腫細胞株(HOS,SaOS2,MG63)において,細胞増殖抑制にはテロメラーゼ活性の低下およびテロメア長の十分な短縮の両者が必要であると考える.活性がなく極めて長いテロメアを有するU2OSに対して,TMPyP4はテロメア長の短縮作用はなかったが有意な細胞増殖抑制を示した.TMPyP4の作用機序として報告されているように,テロメア長に影響を与えず,G-quadruplexに関与したテロメアの非機能化により抗腫瘍効果を示している可能性がある.本実験結果が,肉腫細胞に対するテロメラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制作用の解明に重要な鍵となる可能性がある.
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