研究概要 |
本研究は,テロメラーゼ阻害剤による新しい骨肉腫の治療法の開発を目的としている.ヒト由来骨肉腫細胞に対する阻害剤(TMPyP4:100μM)の抗腫瘍効果ならびにテロメア長に対する影響を検討し,in vitroでの研究を終了した.現在,学術論文に投稿中である.また,マウス肉腫モデルを用いたTMPyP4の抗腫瘍効果ならびにテロメア・テロメラーゼへの影響を検討中である. テロメア長 細胞のDNAを抽出,処理後サザンハイブリダイゼーションを行った.阻害剤投与後4日目にテロメア長を測定した.HOS(p=0.021),SaOS2(p=0.0029),MG63(p=0.019)で有意に短縮した.U2OS(p=0.10)では有意な短縮はなかった.TMPyP4投与後のテロメア長はHOSで5.6±0.54kb,SaOS2で4.0±0.68kb,MG63で9.9±0.45kb,U2OS38±1.1kbであった. 抗腫瘍効果 MTT assayおよびAnnexin V染色によるapoptosisの割合で評価した.HOS(投与後4日:p<0.0001),SaOS2(p<0.001),U2OS(p<0.001)で有意な細胞増殖抑制を認めたがMG63では抑制効果はなかった.apoptosisの割合はHOSで26%,SaOs2で18%,U2OSで23%,MG63で9.1%であった. 以上の実験結果より,骨肉腫細胞株(HOS,SaOS2)において,テロメア長の十分な短縮が細胞増殖抑制に関与していると考える.肉腫に典型的な極めて長いテロメアを有するU2OSに対して,TMPyP4はテロメア長の短縮作用はなかったが有意な細胞増殖抑制を示した.TMPyP4によるテロメア長に影響を与えず,G-quadruplexに関与したテロメアの非機能化により抗腫瘍効果を示している可能性がある.本実験結果が,肉腫細胞に対するTMPyP4による抗腫瘍作用機序の解明に重要な鍵となる可能性がある.また,新たな治療薬となる可能性があり,現在in vivoでの抗腫瘍効果を検討中である.
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