【目的】骨折治癒における低出力超音波刺激の有用性はよく知られており、臨床で広く用いられている。しかしその詳細なメカニズムは不明な点も多い。今回われわれは新しい骨折治癒のメカニズムとして報告されている末梢血由来骨前駆細胞のホーミングに着目し、低出力超音波刺激がこれに与える影響を検討したので報告する。 【方法】GFPマウスと野生株マウスを外科的に結合し、末梢循環を共有するparabiosisを作製した。末梢血においてGFP陽性細胞のキメラを形成後、野生株マウスの大腿骨を骨幹部で骨切りし、骨折モデルとした。骨折作製後、翌日より連日で麻酔下に骨折部へ1日20分間の低出力超音波(LIPUS)照射を行った。2週および4週で検体を採取し、組織標本を作製した。HE染色を行い骨折部の形態を観察した。アルカリフォスファターゼ染色により、骨形成の活性とGFP陽性骨前駆細胞の骨折部へのホーミングを評価した。 【結果】骨折部周囲の仮骨形成はLIPUS照射群、非照射群とも乏しかったが、LIPUS照射群では骨髄内での骨形成がみられた。骨髄内におけるアルカリフォスファターゼ活性は、2週/4週のそれぞれで、骨折中心部(骨折部の中心より0.5mm以内)および周辺部(骨折部の中心より0.5-1.0mm)でLIPUS照射群が非照射群より有意に高かった。末梢血由来のGFP陽性細胞は骨折部の周囲および骨髄内で観察され、特にLIPUS照射群の骨折部においてはアルカリフォスファターゼ活性を示すGFP陽性細胞が多数確認された。 【結論】低出力超音波刺激により骨折モデルにおける骨形成の活性は促進され、末梢血由来骨前駆細胞の関与が示唆された。
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