研究概要 |
近年、様々な悪性腫瘍においてがん幹細胞の存在が示唆され、再発・転移などへの関与が指摘されている。本研究では、これまでに肉腫においても幹細胞様細胞が存在し、その薬剤抵抗性への関与等をhuman osteosarcoma MG63, Ewing's sarcoma HTB166, fibrosarcoma HT1080細胞株を用い検証してきた。その結果は、無血清・非足場依存で幹細胞様のsarcosphereを形成、そのsarcosphereは自己複製能を有し、幹細胞関連遺伝子Nanog, Oct3/4, STAT3およびSOX2の強発現を示した。 さらにsarcosphere cellsは、doxorubicinとcisplatinに対し強い抵抗性を示し、その機序としてDNA repair enzyme genes, MLH1 and MSH2の発現増加によるDNA修復能の増強の関与が一部示唆された。このことは、論文として報告した(Fujii H, et al, IJO, 2009)。 さらに今回は、肉腫細胞においてALDH1活性の高い集団が、幹細胞様細胞を含んでいることを明らかにし、学会発表を行い、論文もすでに投稿・受領済みである。 現在Agileant Arrayにより遺伝子発現profileを間葉系幹細胞との比較において、肉腫細胞の発生に関与する遺伝子変化を検索している。 また、間葉系幹細胞の腫瘍間質細胞としての役割を、ラット肉腫モデルを用いて転移への簡要等を検索し、間葉系幹細胞により転移能が増強される事を見いだしており、このメカニズムについても検討を加える予定である。
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