研究概要 |
本研究では、これまでに肉腫においても幹細胞様細胞が存在し、ALDH1活性の高い集団が幹細胞様細胞を含んでおり、自己複製能を有すること、幹細胞関連遺伝子Nanog, Oct3/4, STAT3およびSOX2の強発現を示すことなどを明らかにしてきた(Honoki K, et al. Oncol. Rep. 2010)。また、その細胞集団が特に薬剤抵抗性に関与し、その機序としてDNA repair enzyme genes, MLH1 and MSH2の発現増加によるDNA修復能の増強の関与が一部示唆された(Fujii H, et al. IJO, 2009)。幹細胞の特性維持には、微小環境nicheの関与が不可欠であり、今回はその中でも間葉系幹細胞(MSC)に着目し、その肉腫伸展機構に与える影響についてラット骨肉腫モデルを用いて検討を加えた。その結果、MSCが骨肉腫細胞の早期生着、転移形成を促進することが示唆された。遺伝子発現解析においてfocal adhesion, cytokine-cytokine receptor, extracelluar matrix-receptor pathwayなどに関与する遺伝子群が、MSCにおいて骨肉腫細胞に比して強く発現しており、MSCが骨肉腫の進展過程に影響を与える際に、これらの遺伝子群が何らかの関与をしていることを示唆している。 現在Agileant Array Chipによりラット骨肉腫、悪性線維性組織球腫、またそれらより単離した幹細胞様特性を有するspheroid細胞における遺伝子発現解析を行い、間葉系幹細胞との比較において、さらに肉腫細胞の発生・進展に関与する遺伝子変化を検索している。
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