研究概要 |
<新たな鑑別診断法の確立>手術治療時に切除されたヒト軟骨系腫瘍組織(内軟骨腫、骨軟骨腫、軟骨肉腫)と関節軟骨に対してはGADの発現を、さらにヒト軟骨肉腫の細胞株OUMS-27(未分化型)に関してはGABA_A受容体サブユニット(α1-6, β1-3, γ1-3, δ, π, θ, ε)、GABA_B受容体R1,R2サブユニットの発現をRT-PCRを用いて調べ、さらにGABAを含めた蛍光免疫染色を行った。【結果と考察】ヒト軟骨系腫瘍のうち軟骨肉腫のみにGADの発現を認めた。さらにその細胞株であるOUMS-27ではGABA_A受容体α1, 2, 3, 5, β1-3, γ1-3, δ, θ, εサブユニットおよびGABA_B受容体R1,R2サブユニットのmRNA発現を認めた。蛍光免疫染色ではOUMS-27にGABA_AおよびGABA_B受容体の免疫陽性反応が認められた。このことから従来の使用されてきたS-100の特殊免疫染色と比較すると明らかに特異性があり、ヒト軟骨系腫瘍の良性と悪性の鑑別診断にGABAシステムが応用できると思われた。 <新たな治療法の確立>OUMS-27にGABAとGABA受容体のアゴニストアンタゴニスを添加し,その増殖効果についてBrdU法とMTT法を用いて調べた。【結果および考察】GABA、ムシモール(GABA_A受容体のアゴニスト)及びバクロフェン(GABA_B受容体のアゴニスト)の添加でOUMS-27細胞の増殖がみられた。またその効果はGABA受容体アンタゴニスト(ビククリンとCGP)添加にて抑制された。DNAの断片化部位をFITC-dUTPで標識し、FACSにて解析したところGABA_B受容体アンタゴニスト(CGP)によりアポトーシスが誘導されていることが確認できた。このことからヒト軟骨肉腫細胞の増殖過程においてGABAシステムの関与が示唆された。
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