研究概要 |
前年度までの研究結果(胎児期発生過程における骨一靭帯以降部の組織学的検証実験、骨孔法によらない骨一移植腱固定法の確立と組織学的検証実験)をふまえて、骨孔法によらない術式に多分化能の備えた骨髄幹細胞を導入して、組織構築の変化を観察した。 独自のウサギACL再建モデルを用いて以下の実験を行った。骨孔を穿けずに靭帯付着部の皮質骨のみ除去し、そこへ移植腱を圧迫固定する独自のmultiple pullout法に、ボルフィールを担体ととして、ボルフィールのみ、Sox9,骨髄幹細胞,Sox9+骨髄幹細胞を移植腱と骨間に導入した。 その結果、ボルフィールのみに比べ、Sox9では、軟骨性の接着部位が増加したが、極めて限定的であった。骨髄幹細胞では、4週ですでにSox9以上に軟骨性の接着部位が見られ、8週ではさらに増加した。しかし、いずれも後方の接着部位に集中しており、前方まで軟骨性の接着がみられたのはわずか1例に過ぎなかった。Sox9+骨髄幹細胞では、さらにわずかに軟骨性接着部位の増加をみたが、有意といえるまでではなかった。 以上より次のように考えられた。肥大軟骨細胞~靭帯細胞の双方に分化可能な骨髄幹細胞の導入は軟骨性接着部位を有意に増加させる。Sox9にもその効果はあるが単体では大きな変化を生じ得なかった。 本結果は、2012年2月にアメリカ整形外科基礎学会(ORS)にて発表、報告し、現在、論文執筆中である。
|