研究概要 |
関節鏡下の診断・治療は,患者への負担が少なく,治癒も早いため,近年急速に適用が増加しているが,最近まで関節鏡下の作業の技術的教育方法はあまり確立していない.そこで,関節鏡下において安全な診断・手術を行うための教育訓練システムを構築するために,研究初年度に関節鏡手術シミュレータの試作を行った.その手術シミュレータを基礎として,研究2年目は実用的なシミュレータについて検討した.具体的には,対象を関節鏡の操作の誤りが大きな事故につながる顎関節とし,三次元CTデータより得られた形状データから,仮想空間上に関節内部を再現した,それぞれの患者データを使用することができるように,容易にCTデータを取り込めるよう工夫した.また,鉗子やカメラ先端が物体に接触した場合に,ハプティックデバイスを使用して操作者へ反力を伝えるものとした.実際に訓練を行った結果,顎関節における関節鏡の操作がほぼ再現できていることが確認された.特に関節鏡の映像と外部から見た関節鏡の位置および姿勢を同時に術者に示すことにより,訓練効果が高くなることが分かった.また,このシミュレータを使用することにより,実際には不可能である方向から仮想的に関節鏡を挿入し,様々な方向から関節内部を観察することができる.そこで,患者データを使用することにより,術前のシミュレーションが可能となるとともに,初学者が三次元的な解剖を学習する際に有用な教育ツールとなることが確認された.
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