変形性関節症の患者数は高齢化社会の到来とともに増加する一方であるが、その根治は困難を極める。変形性関節症の主たる病態は関節軟骨の変性であり、抜本的な治療は変性した軟骨を新たな軟骨組織で置換することと考えられるが、軟骨細胞を非侵襲的に大量に得るととは臨床的に問題が多い。我々は間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化調節機構を解析する過程でRunx遺伝子ファミリーに着目し、Runxを標的とした新たな軟骨再生医療の創生を目指した。本年度、我々は間葉系細胞特異的にRunx1を欠損したマウスを作成した。さらに、Runx1、Runx2二重欠損マウスを交配により得たところ、Runx1、Runx2二重欠損マウスは胸骨由来の軟骨を欠損することを見出した。胸骨ではアルシアンブルーでの染色性が著しく低下しており軟骨の分化の障害が示唆された。ISH法による解析ではII型コラーゲン、X型コラーゲンのいずれの発現も著しく低下しており、組織学的な所見が裏付けられた。更なる検討で、Sox9の発現は対照群と変化が認められなかったが、Sox5、Sox6の発現はほとんど消失しており、軟骨分化障害の原因はSox5、Sox6の発現の異常であると考えられた。さらに、In vitroの検討で、Runx1とRunx2が協調的にSox5の転写を調節することを見出した。とうして、Runxが間葉系幹細胞から軟骨細胞へと分化するのに必須の因子であることを世界で初めて明らかにした。以上のように研究は当初計画通り、順調に進行している。
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