研究概要 |
関節において関節軟骨と軟骨下骨組織は骨軟骨結合部を介して接合しており、一方の病変は容易に他方に影響を及ぼし、拡大、進行すると考えられる。本研究は、正常関節における軟骨下骨組織の構造と代謝、そして変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)における変化を検討し、OAの発症・進展とRAの関節破壊に関わる軟骨下骨組織の役割を明らかにすることによって、OAとRAの予防・治療に資することを目的とするものである。 今年度は、選択的エストロゲン受容体モジュレターの一つであるラロキシフェン塩酸塩(Raloxifene,RLX)の、RAの動物モデルであるコラーゲン誘発関節炎(collagen-induced arthritis.CIA)ラットの関節軟骨と軟骨下骨組織に及ぼす影響を検討した。 6ヵ月齢雌SDラットを、(1)CIA+卵巣摘出(OVX)+RLX投与(COR)、(2)CIA+OVX+vehicle(COV)、(3)CIA+RLX投与(CR)、(4)CIA+vehicle(CV)、(5)control、の5群に分けた。各群について、コラーゲン感作4週後の関節腫脹、関節炎スコア、滑膜増殖、足部関節破壊、大腿骨遠位部骨量(器官レベル)、脛骨近位部海綿骨量(組織レベル)を評価した。関節腫脹、関節炎スコア、滑膜増殖、関節破壊はCOVに対してCORで有意に抑制されていた。RLX投与群では破骨細胞性骨吸収の抑制が組織学的に認められ、骨量は非投与群に比べて投与群で高値であった。RLX投与群での関節破壊の抑制が、RLXの直接的な抗関節炎作用に由来するか、軟骨下骨組織の骨量維持の二次的な効果かは不明であるが、これらの結果はRLXがヒト閉経後RAの関節破壊と骨量減少の抑制に有用であることを示すものと考えられる.
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