研究概要 |
関節において関節軟骨と軟骨下骨組織は骨軟骨結合部を介して接合しており、一方の病変は他方に影響を印ぼし、関節破壊が進展すると考えられる。本研究は、関節症や関節炎における変化、関節破壊に関わる軟骨下骨組織の役割を検討することによって、関節症や関節炎におれる関節破壊の予防・治療に資することを目的とするものてせある。 1.関節リウマチ(RA)では骨脆弱性のため骨折頻度が高いと報告されているが、骨折の大きなリスクである転倒に関する報告は少ない。基本的事項として、RAにおける転倒と骨折の頻度を1年の前向き研究で検討した。転倒頻度は50%であった。転倒頻度は年齢相応健常者に比べて高値であった。 2.ラロキシフェンの、RAモデルであるコラーゲン誘発関節炎(collagen-induced arthritis, CIA)ラットの関節軟骨下骨組織に及ぼす影響を検討し、ラロキシフェンが関節炎と骨量減少を搖することを明らかにした。 3.上位頸椎はRAの好発部位で、軸椎垂直性脱臼は重症病型に発生しやすい。RAを対象にCTを用いて垂直性脱臼の病態を検討した。垂直性脱臼は、環椎外側面の水平化と軸椎外側関節面の沈下によって発生していることが明らかとなった。 4.抗TNF製剤であるエタネルセプト(ETN)の、CIAラットの関節異骨と軟骨下骨組織に及ぼす影響を検討した。軟骨下骨組織におけるパンヌスによる炎症性破壊病変はETN非投与ラットに比べてETN投与ラットで軽度であった。ETN投与でパンヌスに接する骨面は新たに形成された類骨で覆われ、修復機序の発現を認めた。一方、関節軟骨においてはETN投与でも破壊の修復は見られなかった。軟骨下骨組織のmRNAの発現は、ETN投与でTNFとDickkopf-1の低下とWntの上昇を認め、軟骨下骨組織における骨形成機序、すなわら修復機序の存在が確認された。
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