本年度は主に自己抗原特異的T細胞の分化維持におけるIL-15の役割について検討した。自己抗原特異的T細胞をクローンレベルで解析する手法としては、雄個体で発現するHY抗原を特異的に認識するT細胞レセプター(TCR)の遺伝子導入マウス(HY TCR Tgマウス)を利用した。このマウスのT細胞は、雄個体では自己抗原特異的T細胞、雌個体においては外来抗原特異的T細胞と見なすることができる。 HY TCR TgマウスをIL-15欠損マウスと交配し、各種免疫学的解析を行った。 現在のところ以下の結果を得ている。 1)自己抗原特異的T細胞の分化および維持はIL-15に高依存性であるが、外来抗原特異的T細胞はIL-15の有無による影響をほとんど受けなかった。特に末梢での恒常性維持の為の持続的分裂にはIL-15からのシグナルが必須であった。 2)IL-15欠損状態では自己抗原特異的T細胞の機能成熟も障害されており、サイトカイン産生能、細胞傷害能が低下していた。 3)炎症局所で自己抗原特異的T細胞は増殖、活性化を示したが、この際IL-15からのシグナルは、特に増殖反応の誘導に重要な役割を果たしていた。一方、それらのサイトカイン産生はIL-15非依存性に誘導されうることがわかった。
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